
近年のキャリア研究では、キャリアを固定的な適合や直線的な発達としてではなく、意味づけや物語として理解する立場が重視されています。その代表がサビカスのキャリア構成理論です。サビカスは、現代の不確実な社会では、あらかじめ用意されたキャリアの道筋に自分を合わせるのではなく、自分の経験に意味を与えながらキャリアを構成していく力が重要になると考えました。
ここで重視されるのは、過去の経験をどう解釈し、現在の課題をどう捉え、未来をどう語るかという個人の意味づけです。
キャリア・アダプタビリティ―
この理論では、キャリア・アダプタビリティという概念が中心的なテーマになります。キャリア・アダプタビリティは、変化する環境に対応しながらキャリアを築いていくための心理的資源です。
関心、統制、好奇心、自信の内的な要素から説明されます。従来の理論が「何に向いているか」を問う傾向を持っていたのに対し、この立場では「変化の中でどう自分の物語をつくるか」が重視されます。これは現代のキャリア心理学において非常に重要な考え方です。
キャリア理論は、時代とともにその時代のあり方に焦点を移しながら発展してきました。初期には適性と職業の適合が重視され、次に生涯発達の視点が加わり、さらに学習経験や環境との相互作用、そして意味づけや物語の視点へと広がってきたのです。
この流れから見えてくるのは、キャリアが選択の問題ではなく、変化し続ける自己と社会の関係の中で形成される動的な過程であるということではないでしょうか。
キャリア心理学を通じて学ぶべきは、「答えを出すこと」ではないということがこのことからもよくわかります。今、目の当たりにしている悩みに対して、その場の答えを出して安心たいという気持ちになります。
しかし、自己も社会も変化し続けています。その悩みはかたちを変えてまた現れます。自分に向き合い、その悩みの背景にある、まだ十分に構成されていない自分のいくつかのパーツに目を当てることです。そうでなければ、悩みに直面するたびに「答え」を出そうと行動に移すことになります。そして、いつしか、行動に移すこと自体が「答え」になってしまい、展望のない転職やキャリアチェンジを繰り返すことになってしまいます。
「まだ十分に構成されていない自分のいくつかのパーツ」とはなんでしょうか。
ぜひこの機会に考えを深めてみてください。









