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キャリア心理学検定

キャリア心理学は、職業選択の心理を扱う分野として発展してきました。現在では、人生発達、社会環境、認知、動機づけなど多様な心理学領域を横断する学問として研究が進められています。

キャリアを理解するためには、個人の内面的な心理に加えて、社会との相互作用や人生発達の過程を同時に考えるのが現代のキャリア心理学の研究領域です。第1章では、現代のキャリア心理学研究に至るまでの道のりをひも解きながら、その発展の流れを見ていきます。


1900年~1950年代


キャリア心理学は20世紀初頭から体系的な研究分野として発展し始めました。その背景には、産業化の進展によって職業の種類が増え、人がどの仕事に就くべきかを科学的に考える必要が生まれたことがあります。

最初の出発点は、1909年にアメリカの社会改革家であるフランク・パーソンズによる著書「Choosing a Vocation」です。パーソンズは、職業選択は偶然や勘ではなく、個人の特性と職業の特徴を理解したうえで行うべきだと考えました。これは「特性因子理論」と呼ばれる考え方につながり、職業選択を心理学的に研究するようになったきっかけです。

その後、1930年代から1950年代にかけて、心理学の研究が進むにつれてキャリアに関する理論も発展していきました。この時期には、能力検査や適性検査などを用いた職業選択研究が盛んになり、人の特性と職業環境の適合を重視する研究が広がりました。


1960年~1970年代


1960年代になると、キャリアは職業選択の文脈ではなく、人生発達の過程として理解する文脈が色濃くなっていきます。ドナルド・スーパーは、キャリアは人生を通して発達するものであるというライフスパン理論を提唱し、キャリア研究の枠組みを大きく広げました。同じ頃、エリクソンの心理社会的発達理論も人生発達の理解に影響を与え、キャリア形成とアイデンティティの関係が注目されるようになりました。

1970年代以降になると、キャリア形成は個人の意思決定や学習経験とも深く関係することが研究されるようになります。クランボルツは、偶然の出来事や経験から学習することがキャリア形成に影響すると考え、学習理論を基盤としたキャリア理論を提唱しました。これにより、キャリアは計画通りに進むものではなく、経験や環境との相互作用の中で形成されるものとして理解されるようになります。


1990年~現代


さらに1990年代以降になると、雇用環境の変化や働き方の多様化により、キャリア研究は新しい段階に入ります。終身雇用を前提としたキャリアモデルから変化し、個人が主体的にキャリアを構築していくという考え方が広まりました。この時期には、キャリアを人生の意味や自己理解と結びつけて捉える研究も増えています。

このようにキャリア心理学は、20世紀初頭の職業選択研究から始まり、発達心理学、学習理論、社会心理学などの影響を受けながら発展してきました。現在では、仕事だけでなく人生全体を視野に入れてキャリアを理解する学問として研究が進められています。


キャリア形成から「キャリア発達」へ

1960年代以降、キャリア研究の発展とともに強調されるようになったのが、「キャリア発達」の考え方です。それ以前の職業選択研究では、個人の能力や適性と職業の特性を対応させることが中心でしたが、発達心理学の影響を受けることで、キャリアは人生の中で形成され続ける過程として理解されるようになりました。

この考え方を体系的に示した研究者として知られているのがドナルド・スーパーです。スーパーはキャリアを「職業の選択」ではなく、「自己概念の実現の過程」であると考えました。自己概念とは、自分はどのような人間であり、どのような価値を持ち、どのような役割を果たす存在なのかという自己理解の枠組みです。

スーパーによれば、人は人生の中で自己概念を発達させ、その自己概念を社会的役割の中で実現しようとします。職業はその主要な表現の一つであると考えられました。

スーパーはキャリア発達を「ライフスパン」の観点から説明しました。ライフスパンとは、人の発達を幼少期から老年期までの時間軸で捉える考え方です。スーパーはキャリア発達段階を整理し、成長期、探索期、確立期、維持期、下降期を通してキャリアが変化していくと考えました。 特に探索期では、自己理解と職業世界の理解を結びつけながら試行錯誤を繰り返すことが特徴とされます。

またスーパーは、人生の中で人が複数の役割を持つことにも注目しました。人は労働者としてだけでなく、学生、家族の一員、市民など多様な役割を持っています。これらの役割の組み合わせによって人生全体の構造が形づくられます。この考え方は「ライフスペース」という概念として示されました。キャリアは仕事だけで構成されるものではなく、生活のさまざまな役割との関係の中で理解される必要があるとされます。


発達研究とアイデンティティ


発達的視点は、アイデンティティ研究とも密接に関連しています。エリクソンは人生発達を心理社会的発達段階として説明し、青年期においてアイデンティティの確立が重要な課題になると指摘しました。職業の選択や将来の方向性の模索は、自己が社会の中でどのような存在として生きていくのかを確かめる過程でもあります。そのためキャリア形成は、アイデンティティ形成の一部として理解されます。

近年のキャリア研究では、キャリアは人生の節目ごとに再検討される過程として捉えられることが多くなっています。転職、職務の変化、組織環境の変化などを契機として、個人はこれまでのキャリアを再評価し、新たな意味づけを行うことがあります。

このような再構成の過程もキャリア発達の重要な側面とされています。

 


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