
20世紀後半から21世紀にかけて、雇用制度や組織のあり方が変化したことで、キャリアの構造そのものも大きく変化してきました。キャリア心理学では、このような社会構造の変化が個人のキャリア形成にどのような影響を与えるのかが長年の研究テーマとされてきました。
従来のキャリアは、比較的安定した組織の中で長期的に形成されることが一般的でした。現代でもそれは特別なことではなく、企業に就職し、組織の中で経験を積みながら昇進や職務の変化を通してキャリアが発達していくというモデルは一般的です。
このようなキャリアは、組織の内部で段階的に成長していく構造を持っています。個人のキャリアは企業の人事制度と密接に結びついており、組織がキャリアの枠組みをある程度規定していました。
1990年代以降、経済構造や雇用制度の変化によって、このようなキャリアモデルは大きく変化してきました。企業の長期雇用が相対的に弱まり、組織の枠を超えたキャリア形成が広がっています。転職や職務の移動がさかんに行われ、キャリアは一つの組織の中だけで形成されるものではなく、より多様な選択が可能になっています。
境界線を越えるキャリア
このような変化の中で、キャリア研究では新しいキャリア概念が提唱されるようになりました。「バウンダリーレス・キャリア」という考え方では、キャリアは特定の組織の内部に限定されるものではなく、組織の境界を越えて形成されるものとして捉えられます。
また「プロティアン・キャリア」という概念では、キャリアの方向性は組織ではなく個人の価値観によって決定されると考えられます。これらの概念は、キャリアの主体が組織から個人へと移行していることを示しています。
こういった概念が発達する中ですが、従来のキャリア構造自体が否定されるわけではありません。現代のキャリア選択は多様性に富んだものです。その背景にはデジタル技術の発展や産業構造の変化があります。
従来は安定とされてきた企業が、あるときを境に力を失っていく可能性が十分にあります。しかし、だからといって従来型のキャリアと呼ばれる組織での中長期的なキャリア形成に相対的なリスクが高まっているかというと、そうではありません。
組織や環境の変化をよく見ることが大切です。
今後のビジネスマーケットは成長していく領域と衰退していく領域がはっきりしてくるでしょう。その動きに注目しながら自らのキャリアを考える必要があります。その考えがない限りは組織での中長期的なキャリアであっても、組織の外でキャリアを形成するにしても、あやういものと言えます。
変化の中で生きること

変化の中で生きるということは、従来のように組織がキャリアを設計するのではなく、個人が自らの価値観や能力をもとにキャリアを設計することです。同時に、環境の不確実性に適応しながら学習や能力開発を継続していくことも重要になっています。
現代のキャリアは、組織中心の構造から個人主体の構造へと変化していることは事実です。個人主体というのは、仮に組織に属していたとしても、そのキャリアに責任を持ち、自らの考えによって守っていかなければ失われる可能性があるということです。
キャリア心理学では、このような変化の中で自分を見つめるということに重きを置いています。
キャリア心理学では、「今、ここで感じる」自分の心と、その心の置き所となる「社会環境」を両輪で理解していきましょう。











