
キャリア・マネジメント理論とは、個人が自分のキャリアを受動的に与えられるものとしてではなく、主体的に管理し、方向づけていく過程を説明する理論です。
従来のキャリア理論が「どの職業を選ぶか」「どのように適応するか」といった立場を重視していたのに対し、キャリア・マネジメント理論では、「どのように自分のキャリアを継続的に調整し、意思決定し、行動していくか」というプロセスに焦点を当てます。
現代のキャリア環境は、組織に長く所属し続けることを前提とした安定的なものから、変化が常態化した不確実な環境になっています。現代のような環境においては、組織にキャリアを委ねるのではなく、自分自身でキャリアを管理していく力が当然に求められます。
キャリア・マネジメント理論は、このような時代背景の中で重要性を増してきました。
キャリア・マネジメントの3つの要素
キャリア・マネジメントは、大きく三つの要素から構成されます。
第一に自己理解、第二に環境理解、第三に意思決定と行動です。
自己理解とは、自分の価値観、興味、強み、役割意識などを理解することです。「自己概念の変化」で学んだように、自己理解は一度理解が深まればそれが自分の最終形態ではなく、経験を通して変化し続けるものです。
その変化は気づきにくいもので、日々の積み重ねの中でじっくりと変化していきます。ときには、ライフイベントなどを通じて明確に理由が伴う場合もありますが、多くの場合には自己の内面的な変化は目立つかたちでは表れません。いつのまにか、変化しています。
キャリアを管理するとは、この変化し続ける自己を継続的に理解し直すことでもあります。私は「こういう人間だ」という自分を自分たらしめる感覚が非常に大切です。一方、それが変化しているにもかかわらず、また環境と不一致が認められるにもかかわらず、確固たる自分を持ち続けることで人は適応がむずかしくなります。第二の環境理解とはこのことです。
環境理解とは、職業世界や組織、社会の変化、働き方の多様性などを理解することです。個人のキャリアは環境の中で形成されるため、自分の内面だけでなく、外部環境の変化をどのように捉えるかが重要になります。
そして意思決定と行動とは、自己理解と環境理解を踏まえて、具体的な選択を行い、行動に移していくことです。キャリア・マネジメントにおいては、意思決定は一度きりのものではなく、継続的に行われるものと考えられます。選択し、行動し、その結果を振り返り、再び選択するという循環的なプロセスが特徴です。
キャリア・サイクル
このプロセスは、一般に「キャリア・サイクル」として捉えることができます。
すなわち、「自己理解→環境理解→意思決定→行動→振り返り→再理解」という循環です。この循環が繰り返されることで、キャリアは状況に応じて適切に変化し、適応していくことができます。
キャリア・マネジメント理論は、自己決定理論とも深く関連しています。自己決定理論では、人は自律的に選択していると感じられるときに、より強く動機づけられるとされています。キャリアにおいても、自分で選択しているという感覚があるとき、人は主体的に行動しやすくなります。
このことから、キャリア・マネジメントとは、キャリア計画を立てることではなく、「自分で選択している」という感覚を持ちながら行動することでもあります。
また、キャリア・マネジメント理論は、キャリア構成理論とも接点を持ちます。キャリア構成理論が「キャリアは意味づけの過程である」と捉えるのに対し、キャリア・マネジメント理論は、その意味づけをどのように行動に結びつけていくかという実践的な側面を扱います。つまり、ナラティブによって理解された自己物語を、どのように具体的な行動へとつなげていくのかが重要になります。









