
スーパーはキャリア発達を「ライフスパン」の観点から説明しました。ライフスパンとは、人の発達を幼少期から老年期までの時間軸で捉える考え方です。スーパーはキャリア発達段階を整理し、成長期、探索期、確立期、維持期、下降期を通してキャリアが変化していくと考えました。
ここでは、スーパーによるキャリア発達段階(ライフスパンモデル)を各段階に分けて、そのテーマと特徴を解説します。
キャリア発達段階(ライフスパンモデル)
成長期
(Growth)
主に児童期から青年期初期までの時期を指します。この段階では、将来の職業そのものを具体的に選択するというよりも、「働くとは何か」「自分はどのようなことに関心を持つのか」といった基本的な認識が形成されていきます。
子どもは家庭、学校、社会の影響を受けながら、仕事に対するイメージや価値観を少しずつ獲得します。また、自分の得意なことや興味のある活動を通して、能力や興味の自己理解が形成されていきます。スーパーはこの時期に、関心、能力、価値観といった基礎的な自己概念が育まれると考えました。
つまり成長期は、将来のキャリア選択の基盤となる心理的枠組みが形成される段階といえます。
探索期
(Exploration)
青年期後半から成人初期にかけての段階です。この時期には、自分の興味や能力と社会の職業機会を結びつけながら、進路や職業の方向性を模索します。
教育の選択、専攻分野の決定、初期の就職などを通して、人は自分に合う仕事や役割を試行錯誤しながら探していきます。スーパーはこの段階をさらに「結晶化」「具体化」「実行」という過程に分けて説明しました。まず将来の方向性を大まかに定め、次に具体的な職業を検討し、最後に実際の職業行動へと移行していきます。
この段階では、自己理解と職業理解を結びつける過程が中心となります。試行錯誤や迷いが生じることも多く、それ自体がキャリア発達の重要な過程とされています。
確立期
(Establishment)
成人初期から中年期にかけての段階です。この時期には職業の方向性が比較的安定し、仕事の中で能力を発揮しながら地位や役割を確立していくことが中心課題になります。
職務経験を通して専門性を高めたり、昇進や役割の拡大を経験したりすることで、職業的な自己概念がより具体的に形成されます。スーパーはこの段階を「試行」「安定」「前進」といった過程として説明しました。初期には職業への適応を試み、その後安定した役割を確立し、さらに成長や発展を目指すことになります。
維持期
(Maintenance)
中年期以降の段階です。この時期には、これまで築いてきた職業的地位や役割を維持しながら、経験や専門性を活かして働き続けることが中心となります。
仕事の内容そのものは大きく変化しない場合もありますが、役割の意味づけや働き方は変化することがあります。若い世代を指導する立場になったり、組織内で経験を活かす役割を担ったりすることもあります。
この段階では、これまでのキャリアを維持しつつ、変化する環境に適応していくことが課題になります。
下降期
(Decline)
高年期に対応する段階であり、職業活動から徐々に離れていく過程が含まれます。退職や役割の縮小などにより、仕事中心の生活から新しい生活構造へと移行する時期になります。
この段階では、これまでのキャリアを振り返りながら、仕事以外の役割や活動に意味を見出すことが重要になります。社会参加、地域活動、家庭内での役割など、新しい生活領域が人生の中心となる場合もあります。
発達段階は年齢的な流れではない
キャリアはそれぞれの発達段階に向き合いながら、進んでいくのが「キャリア発達」の考え方です。特に探索期では、自己理解と職業世界の理解を結びつけながら試行錯誤を繰り返すことが特徴とされます。
重要なことは、年齢に従って発達段階を踏んでいくわけではなく、個々のキャリア発達の時間的な流れの中で、これらの発達段階が進み、時には重なり合いながら発達していくという考え方です。
発達段階が変化するとき。多くの人は戸惑い、悩み、不安を感じます。
「キャリアが停滞しているのではないか焦る」
「人生の下り坂を降りているようで不安」
そう感じるのは自然なことです。これまでの自己概念から新たな自己を見出し、自分の内面が変わるときです。それは停滞や下り坂で表現されるものかもしれませんが、キャリア心理学では自然な「変化」として捉えます。
今の環境や関係に悩みを感じるようになった背景には、キャリア発達が関係しているかもしれません。









