私たちは社会と自己との間でキャリアを形成しています。その中で、「こうあるべき」という社会の期待を背負いながら、「こうなっていくであろう」という見通しによるキャリア戦略を持つことが必要です。
そして、もうひとつ問いかけるべきは、「自分はどう生きたいのか」です。
社会的には「こうしたほうがよい」し、「こうなっていくであろう見通しもある。しかし、自分の心はその方向に従っているでしょうか。
フランクルは著書「夜と霧」の中で、人は人生に意味を与える存在ではなく、むしろ人生から意味を問われている存在であると述べました。
フランクル「夜と霧」を読む

ヴィクトール・フランクルは、20世紀を代表する精神科医・心理学者の一人であり、実存分析およびロゴセラピー(意味による心理療法)を提唱した人物として知られています。
フランクルはオーストリアのウィーンで生まれ、精神医学と心理学の研究を進めましたが、第二次世界大戦中にナチスによって強制収容所へ送られるという過酷な経験をしました。この体験をもとに、人間がどのように生きる意味を見出すことができるのかを探究しました。
その考えは著書「夜と霧」の中で詳しく述べられています。
フランクルの心理学の中心にあるのは、人間は「意味への意志」を持つ存在であるという考え方です。フランクルは人間を人生の意味を求める存在として理解しました。
人は欲求を満たすために生きるのではなく、自分の人生にどのような意味があるのかを問いながら生きているということを強調しています。
フランクルは、人が人生の意味を見出す方法として三つの価値を示しました。
人生の意味を見出す三つの価値
第一は「創造的価値」です。
仕事や創作活動などを通して何かを生み出すことによってその意味を見出す方法です。これには子育てや教育など「育む」ということから得られる意味もあり、第二の価値にもつながります。
第二は「体験的価値」です。
愛や自然、芸術などの体験を通して人生の意味を感じるということです。
第三は「態度的価値」と呼ばれます。
苦しみや困難に直面したときに、その状況に対してどのような態度を選ぶのかによって意味を見出す方法です。フランクルは、人はどのような状況に置かれても、その状況に対する態度を選ぶ自由を持っていると考えました。
特に重要なのは、フランクルが人生の意味について示した独特の視点です。
その視点は次の一文に込められています。
人は「人生から何を期待するか」を問うのではなく、
「人生が自分に何を期待しているのか」に答える存在である。
つまり、人生の意味は自分が自由に作り出すものというよりも、人生の状況の中で問いかけられるものに<答える>ことによって見出されると考えたのです。
現代に生きる私たちのキャリアと生き方

変化の多い環境にあり、主体的にそのキャリアを形成する責任があることを説明してきました。その変化の中で、私たちもまた自分たちのキャリアのあり方を問われている存在です。キャリアを考えるとき、人は「自分は何をしたいのか」「どのような仕事が自分に合っているのか」といった視点から考えます。これは個人の希望や価値観を中心にキャリアを考える方法です。
しかし、フランクルの視点に立つと、キャリアは「社会の中でどのような役割を求められているのか」という問いに、自らの心を添えながら答えるということです。
人は社会の中で生きており、仕事は社会との関係の中で意味を持ちます。
社会の中には解決されるべき課題や必要とされる役割が存在します。その中で、「自分はどのような役割を担うことができるのか」という立場からキャリアを考えることで、また新たな人生の意味を見出すことができるのかもしれません。
夜と霧 新版 単行本 – 2002/11/6
ヴィクトール・E・フランクル (著), 池田 香代子 (翻訳)
「言語を絶する感動」と評され、人間の偉大と悲惨をあますところなく描いた本書は、日本をはじめ世界的なロングセラーとして600万を超える読者に読みつがれ、現在にいたっている。
原著の初版は1947年、日本語版の初版は1956年。その後著者は、1977年に新たに手を加えた改訂版を出版した。世代を超えて読みつがれたいとの願いから生まれたこの新版は、原著1977年版にもとづき、新しく翻訳したものである。
私とは、私たちの住む社会とは、歴史とは、そして人間とは何か
20世紀を代表する作品を、ここに新たにお送りする。










