
働く中でストレスを感じることは、日常的なことと言えます。ストレスはネガティブなイメージをもって使われる場面が多い一方、適切なストレスは刺激となり、仕事への活力になる場合もあります。新しい役割への挑戦や人間関係の変化、仕事量の増加など、キャリアの節目にはさまざまなストレスが伴います。
社会的再適応評価尺度
人生におけるストレスの大きさを研究したものとして知られているのが、ホームズとレイが提唱した「社会的再適応評価尺度」です。これは、人生の出来事がどの程度の心理的負担を伴うのかを数値化しようとしたもので、一般的に「人生のストレスランキング」として紹介されることがあります。出来事そのものの良し悪しではなく、「生活の変化の大きさ」がストレスに影響するという考え方が特徴です。
代表的な例として挙げられる出来事には、次のようなものがあります。
□ 配偶者の死
□ 離婚
□ 重い病気やけが
□ 結婚
□ 転職や配置転換
□ 引っ越し
この研究で重要なのは、「良い出来事でもストレスになることがある」という点です。昇進や結婚など前向きな変化であっても、生活の調整が必要になるため、心理的な負担が生じる場合があります。キャリアの節目で疲労や不安を感じるのは、自然な反応ともいえます。
キャリア心理学では、ストレスを単なる負担として捉えるだけでなく、成長の過程で生じる自然でかつ必要な反応として理解します。重要なのは、ストレスを完全になくすことではなく、どのように向き合い、意味づけていくかという視点です。
ストレスとキャリアの関係

ストレスには、行動を促す側面もあります。適度な緊張感は集中力を高め、新しい課題に取り組むエネルギーになることがあります。例えば、新しいプロジェクトに関わるときに感じる不安は、準備を丁寧に行うきっかけになる場合があります。しかし、負担が長く続くと疲労が蓄積し、意欲や判断力が低下することもあります。自分の状態を見極めることが、キャリアを安定して進めるために大切です。
キャリアとの関係で見ると、ストレスは「役割の変化」と深く結びついています。昇進や異動、転職などは新しい可能性を広げる一方で、これまでの経験が通用するかどうかという不安も生まれやすくなります。環境が変わるときに感じる緊張は、未知の状況に適応しようとしているサインともいえます。変化の中でストレスを感じること自体は、自然なことです。
また、ストレスの感じ方は人によって異なります。同じ出来事でも、挑戦として受け止める人もいれば、大きな負担として感じる人もいます。この違いは性格だけではなく、価値観やこれまでの経験、周囲の支援の有無などによっても変わります。自分がどのような場面でストレスを感じやすいのかを知ることは、キャリアを長く続けるための大切な手がかりになります。
まずは「気づく」ことから
ストレスと向き合うためには、「気づき」が重要です。
忙しさの中では、自分が疲れていることに気づかないまま行動を続けてしまうことがあります。集中力の低下や小さなミスの増加、感情の起伏の変化などは、ストレスのサインである場合があります。
こうした変化に気づいたときには、無理に気持ちを切り替えようとするのではなく、まず休息や環境の調整を考えることも必要です。
キャリアの視点から見ると、ストレスは自分の価値観を見直すきっかけにもなります。
例えば、長時間労働が続いているときに、「自分はどのような働き方を大切にしたいのか」を考える機会になることがあります。ストレスの原因を外側の出来事だけでなく、自分の感じ方や優先順位と結びつけて考えることで、新しい選択のヒントが見えてくることがあります。
周囲との関係も、ストレスの感じ方に影響するでしょう。安心して相談できる相手がいると、同じ課題でも負担が軽く感じられることがあります。キャリアは一人で築くものではなく、支援者との関わりの中で進んでいくものです。困難を感じたときには、自分だけで抱え込まず、信頼できる人に話すことも大切な行動の一つです。
まずは、自分のストレスに気づくことからです。そのストレスはどのように感じているのか、自己概念と照らし合わせることで、ストレスの正体をより正確に理解ができるようになります。











