
「ストレス」と聞くと、「不快なもの」「嫌なこと」「避けたいもの」を想像するのではないでしょうか。実際に、現代におけるストレスは、人の心身に大きな影響を与えるものが多々あります。
ストレスという概念を体系的に示したのが、内分泌学者であるハンス・セリエ です。セリエは、ストレスを「外部からの刺激そのもの」ではなく、「刺激に対する身体の反応」として捉えました。この点が、ストレス理解の出発点です。
セリエは、生体がさまざまな要求に対して示す非特異的な反応をストレス反応と呼びました。ここでいう「非特異的」とは、刺激の内容にかかわらず、身体が共通の反応パターンを示すという意味です。例えば、仕事上のプレッシャーであっても、人間関係の問題であっても、身体は同様に緊張し、エネルギーを動員する反応を示します。
このストレス反応の過程を説明するモデルとして、セリエは「一般適応症候群(General Adaptation Syndrome)」を提唱しました。このモデルでは、ストレスへの反応は次の三段階で進行するとされています。
警告反応期
この段階では、ストレス要因に直面したときに身体が緊張状態に入り、心拍数の上昇やホルモン分泌の変化などが生じます。いわば、外的な要求に対して即座に対応しようとする初期反応です。
抵抗期
ストレス状態が続くと、身体はその状況に適応しようとし、緊張状態を維持しながら機能を保とうとします。この段階では、一見すると安定しているように見えますが、内部ではエネルギーの消耗が進んでいます。
疲弊期
ストレスが長期化し、適応の限界を超えると、身体はエネルギーを維持できなくなり、さまざまな不調が現れます。これがいわゆるバーンアウトや健康問題につながる段階です。
この三段階モデルは、ストレスが一時的な反応ではなく、時間的なプロセスを持つことを示しています。特に重要なのは、抵抗期においては表面的には問題が見えにくく、気づかないうちに疲弊が進行する点です。
また、セリエはストレスを必ずしも否定的なものとして捉えていません。適度なストレスは、人の行動や適応を促進する側面を持っています。このような前向きなストレスを「ユーストレス(eustress)」と呼びます。一方で、過度で持続的なストレスは「ディストレス(distress)」として、心身に負担を与えるものになります。
産業場面においては、ストレスを単に排除するのではなく、「どの程度であれば適応を促進するのか」「どの段階で負担が大きくなっているのか」を見極めることが重要です。特に、抵抗期から疲弊期への移行に気づくことが、ストレスマネジメントのポイントとなります。











